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18 人材育成で目指すべき人材像 in VUCA

(2022/07/31)

このホームページのどこかに書きましたが、昨今ではVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)な経営環境下で、中長期経営計画や経営戦略を実行はおろか立案することさえままならなくなってきました。

ということは、「中長期の競争優位を実現するために組織構成員が具備すべき」エンプロイアビリティ2.0をもってしても、それだけでは経営環境に対処できなくなってきた、と考えるべきなのでしょう。

ではVUCA環境に適応するのに必要な人材のモデルを仮にエンプロイアビリティ3.0だとすれば、それはどんなもので、どうすればそうなれるのかということですが、ある程度自分なりに思いあたることはあるものの、多くの偉い研究者でさえまだ結論するに至っていない問題だし、もう少し考えを熟成してから書き出そうと思います。

エンプロイアビリティ3.0全体像

といっても、もったいぶってるみたいで嫌味だから今の概略イメージに触れておくと、エンプロイアビリティ3.0を習得するのもやはり会社の目標達成のため、とはいえ目標は目的達成のために設定されるものであって、VUCAの時代でも結局のところ会社が目的達成や自社の存在意義の確立を目指すのは変わらないはずです。

そのために環境や市場がVUCAに変化してもその変化に追従できる適応能力と、その前提としてのゆるぎない自社目的・存在意義を確立することが必要で、自社の存在意義を追及し極めながら臨機応変に実現手段を変えるような経営スタイルを目指すのがこれからのビジネスの在り方のような気がします。

風林火山

注)自分はとりたてて武田信玄ファンでもないですけど、近頃改めて教えられることが多いです。

※環境に追従するため、組織開発の考え方では従来の価値観や目的そのものを棄却再生する必要があるともいわれていますが、その点についてはのちほど。

ビフォーVUCAでは長期経営計画や経営戦略で進路を示していたのに対し、しいて言えばより長期視点で柔軟性と強い意志と深い洞察に基づく「大計」をもって組織を方向付けしつつ都度の経営戦略で機動的に環境適応していく経営に進化していくイメージでしょうか。

ここでもやはりエンプロイアビリティ1.0、2.0が不必要になったわけではなく、経営戦略が世代交代するごとに知見が増え多岐にわたるスキルが求められるようになっているのと同じく、どんどん学び身に着けるべきことが増えていくことになりそうです。

VUCAだから経営学が必要なくなるわけではなく、むしろ知見を知り尽くして状況変化に応じてより臨機応変に使いこなしていく必要があるのでしょう。

エンプロイアビリティ3.0はいってみれば、これからの激動の経営環境に適合し乗り越えていくための、企業生き残りの能力なのです。

エンプロイアビリティ3.0の構成要素

昔の人は習い事を守破離と言い切りましたが、守は自社業務に習熟することだとして、破と離、つまり経営学や他社ベストプラクティスを学び知を深化する破と、環境変化に応じイノベーションともいうべき新たな知の探究・価値創造である離をより深めていく必要があります。

今後VUCAで個人の思考特性や行動特性つまりコンピテンシーとして重要性が増すのがまさに離の心得ともいえる21世紀型スキルで、従来能力に加え異なる発想や多様な価値観と積極的に共存し共創していくいわゆるダイバーシティ&インクルージョンが価値創造のためにますます重要になりそうです。

ダイバーシティインクルージョン

ここで改めてそれぞれ各スキルの内容を吟味すると、ポジティブに仕事に取り組むのに必要な能力要素ともいえる社会人基礎力はいいかえれば、このさきAIやロボットにとってかわられず人間として能動自律的に生き働くための心得といえそうです。

社会人基礎力なしに働いている人が仮にいるとすれば、その人は人材でも人財でもなく単に人手にすぎなくて、そういうモチベーションを感じえない労働を求めている企業は罪深いのかもしれません。

ポータブルスキルは複雑な課題集合体としてのタスクを円滑に解決するために押さえるべき勘所、および他者と連携してよい解決にたどり着くための注意点、実務指針といえそうです。

21世紀型スキルは、従来の課題解決の考え方にとらわれず周りと協調しながら新しい価値を生み出すための、デザイン思考のようないわばオープンなダブルループ学習を意識した行動態度を求めているように思えます。

ビジネスのルールやマーケットが変わったことを察知し、追従し変化に乗じる力を求められていることに他ならないと言えます。

ゆるぎない自社目的・存在意義を確立し自分を見失うことなく変幻自在に環境適応するためには、自社の価値観や文化やアイデンティティの確立に加え、価値観をおなじくする人材の結束を強化しないと軸がぶれてしまうという点で、今後エンプロイアビリティの(3) 動機、人柄、性格、信念、価値観は重要性を増し、会社の理念・存在意義の浸透と人材開発や組織開発の取り組みが必須になっていくのではないでしょうか。

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