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14 お客様のお役に立ち続けてこそリピートしていただける

(2021/12/30)

耳タコですが「企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される(ドラッカー)」なので、ご贔屓いただくためにはお客様の立場に立って、他社がお手伝いするより合理的にお客様の課題解決のお手伝いをし続けることに徹するのが大事だ、とくどくど書き連ねてきました。

策を弄しても結局は商品力に優位性がありお客様の課題解決に有益な商品が勝つ、ゆえに商品力を高めそれを適切にお知らせする不断の努力が必要で、その努力を厭ってはレッドオーシャンから抜け出ることはできないのです。

とはいえ、そういう努力をしていることをちゃんとお客様が知っていなければ競合と同じようにみられてしまうし、これからそういう努力を始めるとしてリピート客確保の働きかけが後回しでよいということもありません。

という意味で、有効そうなリピート化・休眠復活プロモーション手段にはどのようなもの・考え方があるか、ざっと見てみたいと思います。

以下はそれほど真剣に分類しているわけではないので、カテゴリーは参考程度でご覧ください。

基本的な取り組み方針

つい最近お買い上げいただけたお客様なのか少し前かだいぶ前か、どんなものをどのくらいお買い上げいただいていたか、そのレベルによって休眠しているお客様をセグメントに分けて対策する、というのが一般的に普及している基本方針なようです。

でも判断材料がそれしかないならやむをえませんが、お客様が商品を必要とする理由がなくなって休眠しているのか、商品の便益が不十分なのか、商品がご自分に有益であるという認知が不十分なのか、原因がわからなければ本来正しい対処はできないはずです。

なので、あらゆる手を尽くして事前に顧客との接点を作り上げお客さんとスムーズにコミュニケーションできる関係性を作っておいて、休眠原因の究明から始めるのが本来的だし、そうすることこそがお客様のお役に立つことの実践といえるはずです。

コミュニケーション

早期発見・早期対応が重要で、「今までの購入回数が多く、休眠してからの時間が短い」のが優良休眠客でリカバリーしやすいしその値打ちがあるとも言われています。

購入回数あるいは購入累積額が多いお客様が重要であるのは間違っていなくて、過去購入が多いということはそれだけ過去お役に立っていたということにほかならず、今後もお役に立てる可能性が高い、自社・自店が引き続き多くの役割を果たせるチャンスが期待できる、ということになるでしょう。

仮にまだ課題が未解決なら入眠から間がないほうがリカバリーが容易なのは間違ってはいないとは思いますが、自社・自店が提供する価値観に共感していただけるお客様、他ならぬ自社自店の良さを見出してくださっているお客様こそ、今後もお付き合いいただきたいお客様だろうと思います。

そういうお客様に該当するかどうかは、やはり常々のコミュニケーションができていて初めてわかる事です。

商品の使い残りがたっぷりある間などは購入動機自体が休眠するので、ニーズが覚醒するタイミングを捉えるためにも、コミュニケーションが必要です。

B2B取引では、顧客の購買プロセスによってはニーズをいち早くとらえたり変化に即応するためにも、顧客の調達業務の流れやタイミングを分析することは重要です。

リピートメリットを作る

リピートする行為に対してインセンティブをつけることは、良く行われます。

ポイントカードやスタンプカードはゴールが遠いと期待値が下がってしまうので、小さなゴールを頻繁に作るのがコツだそうです。

ポイントカード

お得意様優遇サービスもよくつかわれる手法ですが、リピートインセンティブは時としてそれを差し引いた価格が内的参照価格(その人にとって値頃感のある価格)になりかねないリスクがあるので、安易に依存しないようにします。

サブスクリプションとかサービス化も一種のリピートメリットと言えるでしょう。

B2Bではリピート注文を簡便化するような仕組みや従量制/ステージアップの値引きなどでしょうか。

リマインダ

コモディティ化が進んでいたりヒューリスティックな購入案件は時としてどの店でもどれを選んでもいいという意識になるので、自店舗・自ブランドを常に意識していただいている状態でいてもらうための働きかけが必要です。

お客様が普段使いできるもの、手元に残しておきたいと思うような小物、チラシなど、実体があって日常生活で頻繁に目に入るものは、店を思い出してもらうためのリマインダとして効果があります。

お店の会員カードやポイントカードを何枚も持っている人は少なくないと思いますが、それらはリピートインセンティブの象徴であると同時に、リマインダの効果も持っています。

あと1カ月でポイントが失効するとか、誕生日おめでとうとか、今日のトピックスとか、再認知を促進するためのメール・チラシを渡すのは、単純接触効果を高め店や商品のことを再学習するのに効果的です。

B2Bでは客先への定期訪問などがこれに相当するでしょう。

お客様のニーズ・状態を把握する

何度も書いているように、お客様と良い関係性を作ってお客様のニーズや状態を常時把握し、それに応じたきめ細かい対応をするのが重要で、そのためにCRM(顧客関係管理)は不可欠です。

ふた昔の三河屋さんの御用聞きのように人力でやって、競合に引けを取らない関係性の維持がリーズナブルにできればそれでもいいでしょうし、でも労力を効率的に使いミスを防ぎよりよいサービスを提供したければデジタル化は避けられない気はします。

日常ちょっとした情報を提供した時の反応とかリピート購入の状況でお客様の状態を判断して、お客様対応を微調整するわけで、その情報管理をデジタルで行うわけですが、データを蓄積するのが目的化しがちで、蓄積した情報を解釈してお客さまに適合した対応を実践することこそが目的なのを忘れないようにしたいものです。

満足度アンケートも有効ですが、こちらもアンケートをとることが目的化しているお店が多く、店舗の改善や顧客満足度向上の役に立たないアンケート内容になっているように思えることがしばしばあります。

美味しかったですか?と質問して美味しくなかったと回答されてもどこをどう改善すればいいかわからなくて、質問を塩っぱくなかったですか?に変えれば、塩の量を調整するという行動を起こすことで顧客満足の改善につなげることができるのです。

アンケート

B2BでもCRMは同様に重要で、定期訪問ヒアリングとか顧客満足度アンケートと併せて取り組むことを考えたいところです。

信頼感・親近感醸成

信頼感・親近感があれば、ハズレをつかまされることは少ないだろうという安心感を生むので、購入を後押しする効果があると考えてよいでしょう。

商品の確かさや対応の誠実さが問われるのは言うまでもないですが、クレーム対応やトラブル対応が好ましいと雨降って地固まるというか評価が非常に良くなるそうです。

反省

親近感という点では、購入後の礼状、人間味のあるニュースレター、ブログなどによる価値観の共有といったこまめな働きかけが功を奏するといいます。

客参加イベントの企画は同じ体験を共有することで仲間意識が高まるようだし、アイデアコンテストは商品に対する関与や愛着が高まるようです。

ちょっと変わったところでは、商品使用や購入行為中で好ましい状態が起きた時にいい香りを嗅ぐと、同じ香りをかいだ時に商品や行為の良い印象を思い出すのだそうです。

嗅覚というのは、大脳新皮質を経由せず感情や記憶をつかさどる大脳辺縁系に直接刺激を伝達しているのだそうで、香りと好ましい感情が一体で関連付けされる連合学習が起きるのだといいます。

B2Bで信頼感・親近感醸成ということだと、コンテンツマーケティングにより専門的知識の豊富さを示す、実績を紹介する、頻繁に顔出しして単純接触効果を高める、といったところでしょうか。

警戒感・入店見送りを減らす

特に未訪問のお店には入店しにくいもので、警戒感を低減する方法は多々考えられています。

いちど入店したことがあるといっても、やはり入りやすいに越したことはないでしょう。

一般的には、店内の様子がほど良く見えるようにする、店頭販売や持ち帰り窓口を設けて入店せずに済むようにする、整理整頓や統一感・わかりやすさの改善で店頭の印象をよくする、店頭ボードの文言を工夫する、店頭に入店を誘引するディスプレー・目立つシンボルなどを設置する、など、工夫の余地は多そうです。

B2Bで警戒感を持つとすれば情報が少ない、実績が把握できない、といったことが考えられるので、プロフィールや実績の発信などでしょうか。

工場見学にお招きしてカジュアルにおもてなししつつお悩みを聞き出すなんて、いいかもしれません。

お客様の課題・ニーズを刺激する

スーパーマーケットあたりで季節の節目ごとにフェアをやりますが、季節イベントのようないわゆる季節性販促は、特に非計画購買に効果的に働きます。

今買う理由を作るきっかけとしては時間限定タイムセール、季節や行事や旬の定期オリジナルイベント、お得意先優待セールなど、いまだけここだけ・限定を訴求して、お値打ちな提案・理由のある限定品をプロモーションします。

タイムセール

ターゲットによって反応するイベントは異なるので、自社自店の客層に合わせて設計します。

B2Bは非計画購買はそれほどないとはいえ、一定期間で交換が必要な商品や一定ペースで消費していく消耗品などは工夫の余地があるかもしれません。

課題解決に貢献できる商品機能・便益をアピールする

ややもすると、「そんな使い方があったのか」と商品の良い使い方に気づかなかったことに驚くことがあります。

そういうことが起きそうな商品では、CRMの一環として便利な使い方の情報提供を行えば、購入済みのお客様からは喜ばれるし、未購入のお客様の購入意欲強化策にもなります。

使い方がわかりやすい商品でも、売り込み感を出さずにちょっとしたライフスタイル提案という感じで新商品紹介するのは、お客様の暮らしの充実につながるでしょう。

B2Bでは提案営業が重要なのは言うまでもありません。

お客様にとっての購入障壁を解消する

販売時の接客、商品そのもの、店内インフォメーションなど、お店側は当たり前だと思っていてもわかりにくいことは良くあります。

飲食店に食事に入って、お茶がセルフなのに気づかないことはしばしばだったりします。

販促物や案内は見やすくわかりやすく見やすく端的な表現が必要で、自分の至らぬところはなかなか気づかないから積極的にお客様に教えていただいて改善するべきでしょう。

CRMの一環で改善をお知らせし、どのメッセージの反応が良かったか解析することもできます。

地方では買い物の足に不自由することも少なくなくて、ネット販売、配達、巡回販売など、お客様の不自由が解消できれば新たな需要も期待できます。

移動スーパー

B2Bでも顧客満足度の調査・業務改善は重要で、お客様が必要なのは商品ではなく課題解決だと考えれば、昨今だとサービス化などは前向きに考えることができる方策といえそうです。

留意点

お客様の課題解決により良く取り組んで引く続きご贔屓いただくためには、お客様とより良い関係性をつくることが重要ですが、事業者が順守すべきルール・手続きは多岐に及びます。

これらを事業者に対する縛りだと思っているうちはまだまだ、適切にやることで従来以上にお客様に喜んでいただける、対応していない競合より良い解決を提供できる、という思いで取り組んでいきたいものです。

対応が必要な主な約束事としてはすでにご承知とは思いますが、先に触れた個人情報保護法以外にも特定業種向けの物も含め
・消費者契約法
・景品表示法
・割賦販売法
・消費者基本法
・製造物責任(PL)法
・食品衛生法
・消費生活用製品安全法
・食品安全基本法
・電気用品安全法
・特定商取引法
・食品表示法
・利息制限法
・金融商品取引法
・公益通報者保護法
・ガス事業法
・液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律

といったものがあります。

またグリーンコンシューマリズム、エシカル・コンシューマリズム、フェアトレード運動、ロカボア運動などは意味合い的にはSDGsに包括されていそうですが、これらも企業が社会や消費者と共生するのに重要な概念です。

SDGs

「消費者志向経営」という考え方もあって、「消費者の視点」「健全な市場の担い手」「社会的責任の自覚」を重視した事業経営に努め、事業者として組織体制の整備や具体的な取り組みを進めることを自ら宣言する「消費者志向自主宣言」制度なども前向きに検討してよいでしょう。

これらにうまく対応して、対応していることを胸を張ってお客様に誇示するのもプロモーションの一つです。

「顧客離れを5%改善すると最低でも25%の利益改善が見込める」
「新規顧客を獲得するためには、既存顧客の5倍のコストがかかる」

といわれ、いろいろなリピート策があって推奨されているわけですが、策を弄しても結局商品力に優位性のある商品が勝つわけで、さらに言えばお客様のお役に立ち続けることができるかどうか、に尽きるわけです。

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