09 各種広告媒体のオーバービュー
(2021/12/30)
道具や手段は場面に応じた使い分けが大事で、フォークとスプーンでうどんを食べるような真似はやれなくはないとしても非効率の極みです。
にもかかわらず、お店や会社がプロモーションをしているのを見ると、往々にしてうどんフォークを彷彿とさせるような場面に出くわします。
明らかにプロモーション手段の特徴を理解せず非戦略的にやっているために起きることで、前述のインターネットメディア(公式ホームページ/ブログ/SNS/第三者運営の比較紹介サイト など)の理解に加えて、プロモーションしたい相手と内容と手段の特性や相性をよくよく理解して使いこなしましょう、というがこの記事の趣旨です。
ちなみにどういう場合にどんな集客手段が良いか、というのはやはり一概に言えなくてケースバイケース、専門家の助言を受けながら試行錯誤的に選定していく必要があるでしょう。
新規集客の主な手段
前回説明した公式ホームページ、ブログ、SNS、第三者運営の比較紹介サイト以外にも新規集客するいろいろな手段がありますが、主だったものについて特徴を改めて俯瞰して使い分けを考えてみましょう。
いまだ取引に至っていないどちらかいって不特定多数な潜在・見込みのお客様へのアピール手法を念頭に、前半はアナログ手法で後半がデジタル広告をリストアップしています。記事によって反応率と言ったり反響率と言ったりなのは、参照した情報にそう書いているからなのでご了承ください。
- 折り込みチラシ
反響率は0.01~0.3%程度。商材により反響率は大きく左右され、地域に密着した購入頻度の高い日用品や食材などの広告は来店数増加に結びつきやすいが、不動産や自動車など高額商材だと反響率は低迷しがち。
製品の見せ方やキャッチコピーの工夫、折り込み実施曜日によっても反響率が変わる。
瞬間的な効果があるが効果が続く期間が短く、ほかの大手のチラシに埋もれてしまうこともある。
- ポスティング
反応率は0.1%~0.2%程度。折り込みチラシ同様、商材によって反響率は大きく左右される。郵便受けにに直接投函でき他のチラシに埋もれないが、あまりターゲットから歓迎されないタイプの広告手法。
エリアを細かく指定して狭いエリアを対象に集客するには効果的。
デザインやコピーなど読んでもらうための工夫が必要で、瞬間的な効果があるが効果が続く期間が短い。
- 新聞雑誌・電話帳広告
広告費用は高額になるが年配の方などには効果の高い方法だといわれる。
B2Bだと、業界紙などへの出稿はそれなり効き目がある。
- 郵送DM
開封率は80%、反応率は既存客だと5~15%、見込み客だと1~10%、新規顧客は0.5~1%
B2Bの場合経営層であれば封書、担当者であれば定型ハガキというようにターゲットごとに変え、絞り込むことで反応率を上げられるといわれる。
B2Cだとクーポンやプレゼントなどの特典で反応率を高められるが、郵送料、印刷費や発送作業費などコストが割高になりがち
ちなみに文面の中に「◯◯様へ」など誰宛かが明記されているダイレクトメールは郵便法上信書扱いになるので、普通郵便など決められた送付方法で送らなければならない
- FAXDM
到着率は98%、レスポンス率0.1~0.5%、FAXを所有しているかどうかという点でB2Bのプロモーション手段と言える。
宛先と内容はかならず確認され、他の媒体に比べて低コスト。
紙として出力されるため、その場ですぐには必要なくても気になったものなら保管してもえることも。
お客さんのFAXを使うという意味で少なからずクレームは発生し、白黒かつ用紙1枚分でしか情報を伝えられない
- テレアポ
対象のリストに電話をして商品の宣伝をする。
未経験者には難しく対面ではないのでトークスキルが必要で、依頼する専門業者等のスキルに依存してアポ率は0.3~10%。
- 街頭手配りチラシ
人手でティッシュ、チラシ、サンプルなどを消費者に配布、性別・見た目年齢層・配布場所などである程度セグメントは選べる。サンプル配布は受け取る人の確率が格段に上がるのでコストはかかるが効果はある。
- 看板・のぼり
お店などの場合には街中で目につきやすい看板はとても重要、パッとみてわかりやすいものにする
- 無料セミナー
ビジネスや消費者向け高額商品など、テーマに興味のある人だけを集めセミナーを無料で開催し、終了後に商品紹介や名刺交換して後日フォロー。
信頼関係が構築できれば後々セールスがしやすくなる
時流に乗ったセミナーは効果的だがセミナーへ集客することが最大の課題。
- 展示会
展示会の商品を見てもらい、名刺をいただき後日フォロー。展示会への集客の問題があり出展費用が掛かる。出展の目標をしっかり決めて事前に十分な準備をしないと、出ることが目標になってしまいがち。
- フリーペーパー
WEB広告に触れる機会が少ない中高齢層消費者には未だに強い集客力があるといわれ、媒体によって購読者層が違うので商品との相性があっる。
地域に特化したお店や会社には効果的で新聞を読まない層へもアプローチできるが、新聞折込の方がどちらかと言えば読まれやすい傾向。
クーポンなどをつけるのも効果的
- 紹介
すでに顧客になってくれている方からの紹介は信用度が高く効果の出やすい方法で、信頼姓が高い方の紹介であれば、受注率はグンとアップ。
- プレスリリース
新聞社などに自社の商品発売の情報などを送り、取材して記事にしてもらう。
宣伝効果は高いが、記者の目に留まるプレスリリースを打つ工夫が必要で、サービスや商品も取材する価値のあるものであることが重要。
- 地域の集客イベント
スタンプラリーやはしご酒イベントなど地域イベントで出店したり協賛して消費者認知を高める
- クチコミ(評判)
影響範囲は媒体次第、良くも悪くも影響度が大きいが情報は自社では制御できない
- メルマガ広告
すでに多くの消費者読者がついている既成のメルマガに有償広告掲載する方法で、掲載するメルマガを選ぶことで登録読者の関心や興味の種類を絞り込んで広告配信できる。
広告掲載料は幅があって一般的には一通0.5円~10円。
配信宛先リストが不要で新たなターゲットを開拓でき、自社ホームページに誘導しやすいものの、配信先メールアドレスは入手できず、メルマガ自体飛ばし読みされることもある
- リスティング広告(検索連動型広告)
GoogleやYahooなどに広告を掲載し、利用者が検索をしたときにそのワードに関連が深いと広告が表示され、そのクリック数に応じて費用が発生する。キーワードによっては料金が高額になるので、いかに安価でお客様が検索しそうなキーワードを選ぶかがコツ。
リスティング広告の一種のGoogleショッピング広告は、テキストだけではなく商品の画像や価格、色やサイズなどのバリエーションを広告の時点で表示させることができるECサイト向き広告で、クリック単価が比較的安価でより購買意欲の高いユーザーにアピールできる。
広告コンテンツ作成や更新にやや手間がかかり、広告の表示はgoogleが自動でやるので広告主側で表示制御ができない。
- ディスプレイ広告(バナー広告)
出稿キーワードに関連していそうなWebサイトに自動的に広告が配信され、webサイトやアプリ上の広告枠に表示される画像、動画広告やテキスト広告。
ポータルサイトのトップページなどにも掲載されるため、リスティング広告よりも幅広い層のユーザに訴求できる。
- googleマイビジネス
自社の店舗の情報や写真をgoogleに登録、Google検索やGoogleマップでその情報を表示させ利用者とのコミュニケーションもできる無料ツール。
情報のメンテナンス、特にクチコミへのレスポンスをないがしろにするとユーザーから総スカンを食らったり致命傷を負うこともある。
- (参考)メールマガジン
業界・業種・商材により開封率には幅があって10・0%、クリック率は2%程度と言われる。
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うまく訴求することができれば広告後そのままWebサイトに誘導して資料請求や製品購入につなげられる。
スマートフォンなどターゲットの手元メディアに直接プッシュ配信でき効果測定がしやすいが、開封熟読される工夫が重要。
特定電子メール法の規定対象で、送信者名称、受信拒否ができる旨とその連絡先など、法定の表示義務事項がある。
多くのメールDMは即ゴミ箱行きになるが、発信コストが非常に安いので反応率は低くてもコスト効率は悪くはない。
ターゲットメールアドレスの取得のハードルが高い
アナログな手法はさすがに開発し尽くされている感は否めなくて、対象者を適切に絞ってプロモーションすればそれなりに効果は期待でき、ITを利用しないお客さんにもアプローチできるメリットがあるとは思いますが、アナログ手法は効果測定が簡単正確にできないから、適切に絞り込めているか・効率が良いか、期待通りの効果が出ているかどうか判断できないのが悩みです。
とはいえ経験的には、地域性が強い消費者向けのお店だったら、ポスティング、街頭手配りチラシ・フリーペーパーなど地域に根付いた手法がむしろ有効で、特に店舗の看板やのぼりや外観は、集客に非常に影響が大きいともいわれます。
いっぽうでデジタルな広告手法は、比較的容易に広範囲に働きかけできて効果測定がしやすいことが魅力ながら、商圏が狭い場合は「帯に短し襷に長し」になりかねない点で注意が必要です。。
結局のところこれが決め手、といえるようなやりかたはなくて、やはり状況に応じて合わせ技で使いこなすしかなさそうですが、デジタル・アナログ共通する最大の問題はターゲットをどう絞り込むかで、対象を広げれば成功数は増えるが成功率(費用対効果)は下がり、対象を絞ればその逆になってしまい、バランスをとるのが難しい、ということでしょう。
どの人達がいい反応を示しそうかがわかればその人達だけにプロモーションできるのですが、どうも残念ながらそんなありがたい方法は簡単に見いだせないのが現実で、適切な調査分析と洞察というかセンスに依存する部分かもしれません。
そうはいってもセミナーや展示会やイベントはコロナの影響で自粛せざるを得ないしB2Bの新規顧客開拓はなおさら逆風で、ネットの利用時間が年々増加傾向にある昨今、直接接触なしにコミュニケーションの量と質を稼ぐとなるとデジタルを活用しよほど頭を使って汗をかかないといけなさそうです。
広告効果測定・検証
これがベストといえる方法が特定できない以上、効果のありそうな手段をいろいろ試してよさそうなものを本格的に採用するしかなくて、そのためには効果測定手段と判断基準の明確化が不可欠です。
また良い方法だと思ってやり始めても、しばらくするともっとよさそうな手法が出てきたりお客様の情報入手環境が変わったりするので、適宜変化をとらえ、実行している方法の効果や効率を検証しなければならず、効果測定・検証はプロモーション設計・実施・運用と一体で考えなければいけません。
必要にして十分な精度の効果把握結果を得るためには、特に事前のしっかりした設計が重要です。
デジタル広告のプロモーションの主な効果と測定項目としては、
- ブランドや商品サービスの認知拡大
ブランドや商品サービスをユーザーが知っているかどうか頭の中を直接測定するのは困難なので、普通は「広告がユーザーに見られたか。広告を見てユーザーが内容を理解したか」といったことを、広告が表示された回数であるインプレッション(Imp:Impression)で判断します。広告表示回数をコントロールすることで認知度が比例すると考え、広告表示1000回当たりの単価(インプレッション単価:CPM/Cost Per Mile))で広告の効果判定をします。
- 目的のウェブサイトへの誘導
広告を見てWebサイトやランディングページ(ウェブサイト訪問者が最初にアクセスする入り口となるページ、もしくは商品の注文・問い合わせ・イベント等予約申込みするページ)へ誘導できたかどうか、クリック数(広告がクリックされた回数)やクリック率(CTR:Click Through Rate)で判断します。広告のデザインや文言の設計に反映します。
- コンバージョン率
商品購入やメルマガ会員登録、資料請求など、アクションを獲得できた割合をコンバージョン数(CV:Conversion)やコンバージョン率(CVR:Conversion Rate)などで把握します。顧客獲得単価(CPA:Cost Per Acquisition)またはオーダー獲得単価(CPO:Cost Per Order)、投資利益率(ROI:Return on Investment)などの指標に置き換えて、投下したコストに見合った広告効果が得られたかどうかが判定します。購入や登録、請求などアクションを起こしてもらいたいページの改善に生かします。
その他、購入・サービス利用意向度、イメージアップ度なども広告効果として期待できるでしょう。
アナログ手法の効果測定としては、広告を出した期間と出していない期間とでビジネス成果を比較したり、新規来店客にアンケートで聞いたり、広告には一般客と異なる入り口とか電話番号を記載したり、やはりというかアナログな方法に頼ることになりそうです。
ビデオリサーチという会社名を耳にしたことがあると思いますが、テレビ番組の視聴率やラジオ番組の聴取率、どんなアナログ/デジタルのメディアをどのくらい利用してどんなブランドがどのくらい認知されているか頻繁大規模にアンケート調査する会社です。
質問量も半端でなく、でもあくまでも回答者本人の記憶をもとに回答するので個人的には複雑正確な調査は難しい気がしなくもなくて、アナログ広告効果測定の難しさを垣間見たことがあります。
しかも仮にそれなり効果測定できたとしても、その結果が商品やサービスの内容・魅力によるものなのか、それとも宣伝したエリアや手段の選択、あるいは季節や曜日などタイミングによるものなのかプロモーションのやり方なのか判断しづらいという難点があって、なにかしら改善して改善効果を試すには何度も広告を打たなければならなくて、それなり手間と費用が掛かり試行錯誤するのさえ億劫になってしまいそうです。
広告効果測定・検証の手順としては、
- たとえば5年後のビジネスの到達目標(売り上げ・利益など)を決める
- そのために毎年どれくらい事業成長させる必要があるか検討する
- 各年度の事業計画・目標を決め予算を確保する
- プロモーションの年度目標(ホームページであればアクセス数とかコンバージョン率など、チラシ配布部数・来店客数など)に置き換える
- プロモーションを実施し、効果測定して改善する
- プロモーションの年度目標達成見通しを踏まえ、予算の調整/配分の見直し・プロモーション方針の検討などを行う
といった取り組みになるでしょう。
集客実行手法のまとめ
「こんなふうにすればわりと良いかも」という緩い方向性は後ほど提案するとして、その道のプロ達でも少なからず試行錯誤してやることなのでそれはそれでやむを得ないとして、少なくともいろいろな広告手法やそれを使いこなすうえで役に立つ考え方や適したやり方があること、ビジネスの実態や環境に応じてそれらを上手に使えば効果的効率的に集客できる可能性は十分にある事はご理解いただけたでしょうか。
なにか見込みのありそうなことをやって少しでも現状を打開していく努力を続けないと、景気がおあつらえ向きに良くなってくれるのはとうてい期待できません。
集客のためには多様で緻密な対策を戦略的にやらなければならないわけですが、お店のご主人や会社の経営者・社員はそれぞれ物販やサービス提供のプロであっても戦略や広告プロジェクト推進のプロとは言えません。
戦略的に外部の適切な専門家の力を借りることは、店・会社は本来自分がもっとも付加価値を生める活動に集中できるから、実はもっとも効率的で賢明な選択なのです。