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04 顧客インサイトに適合して進化し成長する

(2021/11/28)

前回「03 二兎を追うものは一兎さえ失う」では、お客さんの満足感を高め御贔屓いただくため、まだ自社自店舗を知らないお客さんに迷わず選んでもらうためには、お付き合いしたいお客さんをそのニーズや価値観などで絞り込むほうが良いことを学びました。

でもそうできたとして、どんな風にお客様のニーズに合致するように自社・自店舗の特徴を強化し特色を出せばいいでしょうか。

今回も対消費者ビジネス(今後B2Cと略記することがあります)を題材にしてまず事例から見ていくことにして、事業者間取引(今後B2Bと略記することがあります)については次回の勉強の最後のほうで触れます。

今日も焼肉屋さんで勉強です

前回たとえ話した焼肉屋さんの悩みはどんな用途や嗜好にも合致した店というのはかなり難しい、ということを伝えたかったわけで、対象にするお客さんを絞った店づくりをしたほうが満足感が高くなるので、利益もお客さんの定着も増えそうなことがわかりました。

焼肉

いいかえれば特定のお客さんに特化することでお客さんの便益が増える(満足感がアップする)ということですが、新規客開拓をするためにはもう一つ、ジャストフィットであることをまだ巡り合ってもいない潜在顧客に感じ取ってもらう必要があります。

来てほしいお客さんが自分向きの店であることを知っていれば、迷わず来店していただけるはずです。

まずは実際の店づくり・商品づくりはどんなふうに行われるのか、実例を見てみましょう。

焼肉チェーンの特徴(ターゲティング・ポジショニング)


それぞれとても特徴的な店づくりですが、各チェーンがどんなセグメント(お客さんの集団)に狙いを定めているか、思いを巡らせてみてください。

特に焼肉の和民の取り組みは、社会環境が変わると求められるものも変わる、逆に言えば、昔は繁盛していた店でも環境変化によって凋落する危険は十分にあるから、変化を見逃さず常に市場に適応していく必要がある、というお手本のような例ではないでしょうか。

最新のターゲティングの手法

うんと昔は、販売促進と言えば対象を特定せず画一的に広告する、テレビCMとか新聞広告とかいわゆるマスマーケティングが主流でした。

しかしマスマーケティングは多くの人が広告を見るものの、商品に興味の無い顧客にも情報を届けることになり無駄な費用が掛かる事から、決して費用対効果の良いマーケティング手法ではありませんでした。

費用対効果を改善したマーケティングがセグメントマーケティングで、たとえばアパレル業界では最近までF1層と呼ばれる20~34歳の女性を徹底的にマークしてきました。

F1の”F”はFemale(女性)、”1”は20~34歳の女性層を指して、このセグメントはトレンドに敏感で、消費意欲が強い、ネットを使いこなしていて市場をリードする女性たちだから、この層にもれなくアピールすれば勝利は確実だったわけです、最近までは。

キャリアウーマン

ところが最近では20~34歳の女性というくくりでは、ライフスタイルや価値観の多様化のために大雑把すぎて狙いこめなくなっていて、そのため従来のセグメントマーケティングに取って替わりかけたのがOne to Oneマーケティングです。

One to OneマーケティングはITの力を借りて、その人がネットショップでどんなものを見比べてどれを購入したか、その挙動データを収集分析して購買傾向を推測し、おすすめを提示してお買い上げに誘導する手法です。

One to Oneマーケティングではそのジャンルや商品に興味のある人にしか広告を表示しないので、広告の視聴数自体は減るものの確実性が高まるから視聴あたりの購入頻度は高くなり効率が改善するのです。

ところが商品に興味を持っていそうな挙動の人を選んで広告するOne to Oneマーケティングにも弱点があって、興味はあるかもしれないがまだ商品の存在に気づいていないような潜在層(Webショップで閲覧行動をしていない人)は行動履歴データがないから分析もアプローチもできないのです。

ましてや何が欲しいのかが自分でもわからなくなっているとまで言われる昨今の消費者だと、その検索行動や購買行動をいくら分析しても本当に欲しいものを見つけることはできません。

テレビCMはそういう意味では、潜在層に対しても商品イメージを植え付けられる強みがあったわけです。

ある意味、実は自分はこの商品を必要としていたんだ、こんなことに無意識に困っていたんだとお客様に気づかせるために考えられたマーケティング手法がペルソナマーケティングと言えそうです。

潜在客が取りそうな行動や抱きそうな価値観や課題を予測して、時には本人さえも気付いていない欲求や本音などのいわゆるインサイトを見抜き、ちょうどよさそうなタイミングで価値観に響くメッセージを送り込んで、商品への共感を引き起こしてお買い上げに導くマーケティング手法と言えるでしょう。

ペルソナやカスタマージャーニーマップは消費者のターゲティングに使う手法のイメージがありますが、B2Bでも有効な方法です。

というかB2Bだと昔から法人営業という活動で顧客企業に合わせた個別営業をやっていたわけで、昨今ではこれがABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング、顧客に合わせた最適なアプローチを行い、自社の事業目標を達成するマーケティング)というペルソナと同じような概念にリフレッシュされています。

これらについても後ほど考え方ややりかたを改めて説明しますが、そのベースにあるのはセグメンテーション・ターゲティングの考え方なので、ぜひ実際のお客さんや自分のビジネスを冷静に見直して、いろいろなグループ分けをして攻略方法に思いをはせてみてください。

差別化集中していることを適切に宣伝する

今どきのお客さんは事前にしっかり店選びをして、用途や好みに向いていない店には足を向けなくなっています。

それどころか、「用途に向いているかどうかはっきりわからない店」に行って失敗したくなくて、お店の雰囲気がよくわからない店は選択肢から除外することも往々にしてあります。

ちなみに、損をしたくないという圧力が強く働く人間心理は、プロスペクト理論という考え方で説明されているので、ご興味あれば調べてみてください。

期待に沿えるかどうか不確かだと、それだけで選んでもらえないので、お値段以上の価値があるということと、お客さんがそのことを知ってることが大事だ、という、「01 売れないワケを原点に戻って洞察する」という話に立ち戻るのです。

拡声器

言い方を変えると、世の中には同じように見える商品・サービスがゴマンとあってお客様もどれを選べばいいのかわからず困っていて、お客様にぴったりの商材がここにある事を教えてあげることはお客様にとって必要だしありがたいことなのです。

さらにいえば、お客様は自分が選択した商品やサービスが自分にとって最適だった、一番良い選択をできたという確信を欲していて、自分自身で納得できる根拠があれば買い物の結果に満足できるのです。

これはB2Bでも同じことで、昨今では商談のお声がかかった時点で半ば以上顧客の意思が決まっているともいわれ、お客様の購入候補に入るための努力は重要です。

新規客獲得に苦しんでいる店・会社は、少なからずその原因がこのあたりにありそうな気がします。

ではどのように宣伝していけばいいかというと、お店や会社の商圏、顧客層、ビジネスの特質など、なにより今どんなふうに宣伝しているかによって最善の打ち手は百社百様、一般論はのちほどご案内するとしても、こうすればいいという回答は現状調査しない限り残念ながらできません。

あえて最善の方法をあげるとすれば、ちゃんとした経営環境分析やそれをもとにどういう切り口でどう対処するのが良いか、方法論の知識と方向性を決めるスキルを持つ専門家に助言してもらうことでしょう。

ここでのまとめ

やはり小手先で集客を図るのでなく、買わせるのでなく、お客さんが買いたくなったとき・課題が表面化したときにすんなり自分向きだと思ってもらえる店になり、マメにその訴求をする、言い古した言葉ですけどお客さんの立場になって考えるのが肝心なのです。

じゃどうすればいい?

差別化集中は強くお勧めしたいので、次回は別の味付けでもう少し事例補足しながら、その後顧客を絞るかどうかともかくとしてようやく具体的で効果的な集客の進め方を考えていきたいと思います。

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