(2021/06/10)
「経営戦略の系譜」記事では、経営戦略の立案方法に固執してはダメとまとめましたが、とはいえ学び事は「守破離」といってまず基本をマスターしないと応用も実戦も出来るはずはないので、この記事を読んでいる方はだいたい知っているとは思いますが、教科書に書いてある正しいといわれる「型」を簡単におさらいします。
そのうえで、なぜ実情に合わなくなってきているか考えたいと思います。
(2021/06/10)
経営系の教科書に解説されている一般的な企業戦略のたてかたをなぞっているので、若干ツッコミどころはありますがご了承ください。
基本を学びなおすのは決して無駄手間ではなくて、もう少し詳しく学びなおしたい場合はそれなりの書籍など再読をお勧めします。
経営目的であるミッション達成のため、理念に準拠しながら決定した「進むべき方向性」が戦略です。
逆に言えば、戦略を策定するには事前に理念ミッションを再確認する必要があるということになります。
ミッションが時代にそぐわなくなったりすることもあって、見直しが必要になる事もあるかもしれません。
超長期の経営目的を目標にしたくてもあまりに不確定要素が多くて先が見えないので、普通は業界にもよるものの3~5年先の自社の事業の姿を中長期のビジョン(実現したい自社の将来像)として定めます。
成り行きでは実現が難しいが努力すれば達成できるレベルで定量的に達成度合いが確認できる、その設定に納得感が持てる目標値を設定するのが適切でしょう。
自社のこれからの事業成果に影響を与える要素や傾向、ビジネスチャンスや脅威を、PEST分析、5フォース分析などにより洗い出します。
自社が持つビジネス上の強み・弱みでビジョン達成に影響を与えうるものを、バリューチェーン分析やVRIO分析で抽出・分析します。
見方を変えると強み弱みが逆転することも少なくないので、抽出した根拠も明確化しておく必要があります。
3C分析で業界優位を生み出す成功要因を見出し、SWOT分析で強み・弱み・機会・脅威を整理します。
TOWS分析で戦略案の作成検討(強みを生かして機会に乗じる/弱みを克服して脅威から身を守る/強みを生かして脅威を回避する/弱みを補って機会を掴む)を行います。
戦略案と自社との適合性や魅力度を踏まえ、自社で実行可能な戦略を選定します。
バランススコアカードの戦略マップの考え方など参考になるでしょう。
戦略を実行するのに適した具体的な事業領域を選定します。
全社の戦略(企業戦略)を事業別の戦略や機能別の戦略にブレークダウンし、さらに実行計画を作ります。
いつまでに、誰が、どのくらいやるのか、だれが進捗を確認するのか、どういう指標で進捗を把握するか、進捗過不足にどう対処するか、決めておきます。
戦略実行フェーズにおいては予定通り実施できているかモニタリングし、計画からずれている場合には介入して正常化を図ります。
当初の見込み通りに進まない場合、状況が変わった場合には、計画・戦略の見直しをすることも考えます。
このプロセスに触れていない教科書もありますが、計画終了で振り返り、学習、知見蓄積ができるかどうかが企業の戦略力の差につながるのでしょう。
もっとも、「経営戦略の系譜」の「資源ベース理論」に書いたように、「競争優位のために手に入れるべき資源」を手に入れるために必要な資源はいまだ特定されていないようですが。
(2021/06/10)
必ずしも戦略フレームワークそのものの欠陥ではないものの、戦略がうまく実行できない理由はいくつか考えられるので、リストアップしてみました。
※立てた戦略が的外れで効果を出せないこともあるでしょうが、これについてはここでは考えません。
このほかに原因を思いつけるかたは、ご指摘ご意見いただけると幸いです。
どうすればこれらの課題をクリアできるか、その方策はのちの記事「今後の戦略経営」で考えます。
「世の中のためになる事をする」ミッションを掲げていながらビジョンは「年度利益額○○千万円」というのでは目的と目標のつじつまが合わず、社員が戸惑うかもしれません。
仕事のやり方が独りよがりで計画性がなくて、理念やミッションをないがしろにしがちだったり行動力や決断力に懸念を感じるような経営者に従業員がついていくでしょうか?
株主への利益還元を求めすぎるのは企業の健全長期的な成長をゆがめることになりますが、経営に明るい投資のプロによる正しい監督・指導は必要でしょう
先に触れたように経営戦略そのものがわかりにくい概念でもあります
多くの経営戦略は戦略ブレークダウンステージが必ずしも入念にできておらず具体性と実行指針に乏しく、落とし込みがあいまいになりがちだといわれています
欧米は契約社会で役割明文化の風土であるのに対し、日本はよく言えばお互い察しあう協調と阿吽の呼吸の国柄で、あまり物事の進め方を規定明文化しない傾向にあるのではないでしょうか
従来の経営戦略立案プロセスはあまり環境変化を想定しているようには思えなくて、とはいえ環境への機動的な追従も適切に行われてはいなかった気がします
そもそも戦略実行を担う管理職の経営マネジメント能力は、多くの企業で人事上の深刻な課題だといわれているようです
ほかのいろいろな原因とも深く関係しますが、結局戦略を実行するのは社員なのに、その社員が自分事だと思わず手を抜いていたり怠けていたり反発したりするようでは戦略達成はおぼつかないでしょう。