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経営戦略の必要性とは

(2021/06/10)

経営戦略とか経営計画なんて作るだけムダだという若干乱暴な議論もあるし、そもそも未達に終わることが多いといわれる経営戦略なんて、作る価値があるのでしょうか?

たとえばのおはなしですが、北仙台から明石の魚の棚商店街の立ち呑み屋に行くのにも、いろんな移動手段を組み合わせたルートがいろいろあって、コスト/所要時間/体力消耗/乗り換えの煩雑さなど、それぞれメリットデメリットがあります。

北仙台明石

たしかに経営判断に必要な情報すべてを収集できるわけでもないし、その時々の経営環境で最適解は変わりうるので、当初の戦略・計画が陳腐化することは少なくないし最善最良の判断ができるとは限らないのですが、そもそもいろいろ考慮すべきことがあって情報収集できていることと謎のままの情報がある事、より良い判断をするのにいくつも判断基準があること、など、平時におちついて考えて頭を整理しておくことで、ベストではなくてもよりベターな選択をできる可能性が高まると思うのです。

そしてより良い結果を出すために、皆の認識を合わせて優先度を見極めながら効率を意識しながら取り組んで、最善手とはいかなくてもより良い解決に近づこうと模索を続ける必要がある、ということを理解するべきだと思うのです。

近頃の猫の目のような経営環境変化で、やっていることに自信喪失しかかっている戦略屋さんもいるかもしれませんが、元気を出しましょう、本当に経営戦略が必要なのはこれからだと信じましょう。

※ちなみに上のように、コスト/所要時間/体力消耗/乗り換えの煩雑さなど複数の評価基準をもとに旅行行程を選抜するようなとき、AHP(階層分析法:Analytic Hierachy Process)という意思決定手法をつかうと納得のできる決定ができます、ご参考まで。

達成されない中長期計画

(2021/06/10)

「経営戦略は、組織の中長期的な方針や計画を指す用語である」(Wikipedia)なのだそうですが、中長期を想定した計画としては中長期計画というものもあります。

よほど目標が低くない限り実行指針なしに計画を立てることはないと考えれば、中長期計画を成功させるための秘策として経営戦略を立てるという説明がおそらく、中長期計画と経営戦略の腑に落ちる関係ではないでしょうか。

中長期計画に関していえば、「回答企業の91.4%が中期経営計画を、59.9%が長期ビジョンを策定」(日本IR協議会、第28回IR活動の実態調査 2021年4月、全株式上場会社 3,890 社中 1,032 社から回答)だそうで、いっぽう他の調査では中期計画未達に終わるのが半分から三分の二だそうです。

中期計画

外部環境の変化などによる中期経営計画の陳腐化リスク・形骸化リスクはかねてから指摘されていたのですが、コロナ禍においてこのリスクはさらに高まっているといわれています。

経営戦略はなぜ必要なのか

(2021/06/10)

前述の第28回IR活動の実態調査のおはなしの続きですが、上場企業の少なくとも24%(943社)は中期経営計画を重要だと認識しているから立案しているわけで、にもかかわらず上場企業の少なくとも470社は中期計画未達に終わる、いいかえれば経営戦略実行に失敗しているらしいということになります。

なぜ失敗するかは後々考えるとして、なぜ中期計画を立案するかといえば、まず考えられるのは株主対策です。

今後数年を成り行きで無計画に経営するとは、さすがに社長は株主に対して言えないでしょうから、それなり意欲的な業績見通しを示さざるを得ません。

根拠もなしに良好な業績を示してでたらめな奴だと更迭の憂き目にあいたくないので、それなり見栄えのする経営戦略を作ることになる訳です。

では経営戦略・経営計画は社長の首を暫定的に守るためだけの価値しかないのでしょうか。

社長発表

アメリカの心理学者エドウィン・ロックが提唱した「目標設定理論」によれば、本人が納得している目標であれば曖昧な目標より明確な目標を設定するほうが結果としての業績は高く、難易度の低い目標より難易度の高い目標を設定した方が業績は高いそうです。

目標がない場合の成果は非常にしばしば低迷し、最終的な目的が定められていたとしてもそれに至る途中経過の成績が伸び悩み、好成績でゴールできない可能性が高まります。

ちなみに「目的」は最終的に成し遂げようと目指す到達点で、「目標」は目的を達成するために設けた具体的な途中経過の達成水準です。

企業が中長期目標を定めるのは、さしあたり3~5年先に到達したい達成目標を明示し、さらにその未来の成長の実現を少しでも確実にするためなのです。

この際、皆が同じ認識でなくそれぞれ勝手バラバラなことをやっては、お互いの力が相殺しあって非効率だから、みんなの認識をそろえ皆が同じ価値観で仕事をする必要があって、そのためには方向性や取り組みかたを明示的に周知徹底する必要があります。

少しでも効率よく確実に目標達成するために、経営リソースを効率よく最適に配分し、できるだけ少ない負荷で中長期目標を達成するために、社内ベクトルを合わせる手段として経営戦略を定めるわけです。

ベクトル

ランチェスター法則をもとに市場シェアの目標値を科学的に明らかにしたクープマンは、戦争の勝ち負けの理論であるクープマンモデルのなかで、戦略力2、戦術力1の資源配分が最大の成果をあげるのだとしています。

クープマンモデルは本物の戦争についての理論ではありますが、企業同士がしのぎを削りあう経営環境は戦争と紙一重、それなりに通じるところはありそうです。

貴社の経営リソースは、どのくらい戦略に向けられていますか?

経営戦略が不必要なケース

(2021/06/10)

戦略が「特定の目的を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・応用科学(Wikipedia)」なのだとすれば、戦略が必要ないといえるのは

●達成すべき目的・目標がない場合
●目的・目標目標がなりゆきでも実現できる場合
●すぐにシンプルに目的・目標達成できる(日常オペレーションとか)、課題の複雑性が低くとにかく片っ端から片付ければよいとか大局考慮が不要な場合

なのでしょう。

経営戦略が立てられない場合もあって、それは次記事で考えます。

目標は目的達成のための中間指標だから、目的がありながら目標がないとすればマネジメントしていないのと同義で経営上の致命的不具合でしかありませんが、原始的な経営体だとそういうことがあるかもしれません。

原始人

いっぽう企業に目的がないというのは、日々の食い扶持や今晩の飲み代を稼ぐことだけ考えてプアなマインドで働いている感じでしょうか。

まぁ目的や目標がない企業さんはそもそもこの記事を見るはずもないだろうし、手あたり次第とか成り行き任せのヒトも同様だろうから、これ以上触れても時間の無駄ということで、このケースは深入りしないことにします。

経営戦略を立てるのが困難な場合

(2021/06/10)

スタートアップ直後のベンチャー企業のように、ダイナミックに成長環境への適応を強いられる企業のなかには、経営戦略を確定するのが困難な場合があるといわれます。

環境の変化や顧客の応答に臨機応変に対応して柔軟機動的に打ち手を組み替えるほうが結果として成功する、計画に固執することは失敗につながりかねないというのです。

頑張る

このアプローチにあえて付けられた名前が「創発的戦略」で、事前に計画を立てるにしても曖昧さを是として、経営環境に応じ事前には計画していなかった対処を後でまとめて意味づけして戦略としてみなす、経営戦略は実行の試行錯誤の中で形成される、という考え方なようです。

創発的戦略のポイントは、日々の試行錯誤の中で学習(どちらかいうとダブルループ学習)がなされ、次第に考え方に一貫性が醸成され組織に浸透しパターン化される、次第にコンセプトの共有がなされベクトルがそろっていく、というところにあって、逆に正しく確実に学習され組織で知が共有されない限り、単なるいきあたりばったりか属人的経営に陥ります。

明示的に戦略が立てられていない企業、あるいはオフィシャルな戦略があっても相容れない文化価値観があるような場合、「誤った」学習の結果としてアングラな戦略(ないし非公式集団規範)が生成されている場合もあるかもしれません。

非公式集団規範の話は、人材・組織の課題として別途考えるとします。

創発的戦略は基本的に、商品が市場に受け入れられるかどうかさえ分からないカオスな状況下とか事業の推進に不可欠な情報が入手できない場合だとあり得るかもしれませんが、多少なりとも情報なり手ごたえがつかめておぼろげにでも方向性が定まった時点以降は、経営のベクトルを合わせて経営資源の無駄な消費を最小限にとどめるため、明示的に戦略を社内で共有することが不可欠だと思えるのです。

戦略を思い描くことができない場合

(2021/06/10)

昨今のようにVUCAな経営環境だと、明日何が起きるかわからない、もはやどうしたらいいかわからない、戦略を思い描けないということはあるかもしれません。

とはいえ主観的にどうすればよいかわからないからといって、いかに目標を達成するかプランニングする必要がないわけではないでしょう。

ヘンリー・フォードは、「未来を考えない者に未来はない」と言いました。

「計画を立てれば未来が現在になり、あなたは行動を起こすことができる」と言ったのはアラン・ラケイン(米国のタイムマネジメント分野の自己啓発作家)です。

日ごろから戦略を考えていないと対応が遅れ勝ちになるのはいわずもがなで、環境要因に振り回されてしまう会社は、そもそも戦略が欠けているからでしょう。

想定外の事象が起こる以前の平時から、会社や事業の将来をデザインする意図をもって落ち着いて情報探索して少しでも正しいデシジョンを心掛けるのか、それとも問題が起きてからあわてて、とっさに思い浮かぶ好手かどうかさえよくわからない対策でその場をしのぐか、その結果が積み重なってくると結構な差が開くことは想像に難くないことです。

トラブルの修復にかかるエネルギーより、事前に予防するエネルギーのほうがよほど少なくて済むことは誰でも知っていることで、不確実な状況でも事前に対処できることは手を打つべきでしょう。

いかにより良く自社の目的を達成し続けるか、なりゆきと目標(経営計画=ビジョン)のギャップをどう埋めるかが戦略であり、目標と目的と行動を示すのが混迷期のリーダーの役目だといわれます。

リーダーシップの研修でよく引用される、ある登山隊がピレネー山脈で遭難し、たまたま隊員の服のポケットに1枚の地図が入っていて、それを頼りに無事下山したがそれは実はアルプスの地図だった、という実話があります。

登山隊

できすぎた話ですが、この話がしばしば引用されるのは、正解をもっているかどうかより共通のストーリーを持っているかどうかが重要だ、登山隊を救ったのは地図ではなくて、きわめて断片的な情報を元に状況を推測し、見当をつけやるべきことを決め、そしてメンバーたちを納得させ行動させたリーダーシップだった、という教えを伝えたいからなのです。

そして今VUCAのなかでなおさら、むろん最大限の情報収集と洞察は言わずもがな必要ですが、不確実ななかでデシジョンし皆を動かせるリーダーシップ、その表明としての戦略が必要なのです。

経営戦略を立案するデメリットもいうまでもなくあって、かならずしも有効な戦略ができるとは限らず、立案するのにそれなりにエネルギーを必要とするうえ、継続的なメンテナンスをする必要があります。

往々にして忘れ去られがちですが、戦略は立てた瞬間から陳腐化が始まることを正しく認識する必要があります。

この記事をここまで読んだ方は、経営戦略の重要性を認識していてなおかつ現状に問題意識がありながらいい打開策が思いつかなくて悩んでいる、ということだと思います。

このホームページが少しでも、そういう方のお役に立つことを願っているところです。

ナポレオン・ボナパルトの「冷静に、かつ忍耐強く、未来を見通す力だけが、未来を実現してゆく」という言葉でこの記事を終わりたいと思います。

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